【スタッフブログ】お口と体の密接な関係 ―口腔ケアの健康効果―
皆さん、定期的に歯医者さんへ行って、口腔ケアを行っていますか?
社会人になって歯医者さんへ行く時間がない、痛くなってから行けばいいと思っている人も多いと思います。
厚生労働省は、皆さんも学生時代に経験したことがある歯科検診を、
国民全体に対しても2025年度義務化を目指しています(国民皆歯科検診)。
実は、口腔の疾患はさまざまな全身疾患と関連していることが報告されており、口腔の健康状態は全身的な健康状態と密接な関連があります。
そのため、口腔の健康状態を維持、改善するための歯科治療は、全身的な健康状態の維持にとって欠かせないものと考えられます。
ご一読いただき、生涯、健康でおいしくご飯が食べられるようにお口のケア考えてみましょう。
口腔の疾患と全身疾患との関連
代表的な口腔の疾患にはむし歯と歯周病があります。
特に歯周病はさまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。
なかでも歯周病と糖尿病との関連はエビデンスが高いものとして知られています。
糖尿病は糖代謝異常により高血糖状態となる代謝疾患であり、国内の患者数が多い疾患の一つです。
糖尿病の主な合併症には、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などがあります。
また、糖尿病による免疫機能の低下から易感染性(感染しやすい状態)となることで歯周組織の炎症が進み、歯周病が悪化することから歯周病は糖尿病の合併症としても認識されています。
多くの疫学調査は、糖尿病患者の歯周病が進行していることを示しており、また歯周病のある糖尿病患者に歯周治療を行うことで、血糖コントロールの指標となるHbA1cに改善が見られることから、歯周病と糖尿病との間には双方向的な関連があるといわれています。
日本歯周病学会は、糖尿病患者に対する歯周治療を推奨しており、日本糖尿病学会でも、2型糖尿病患者に対する歯周治療により血糖が改善する可能性があることから、糖尿病患者への歯周治療を推奨しています。
糖尿病患者に対して歯周治療を行うことは、歯周病の改善だけではなく糖尿病のコントロールにも有効であると考えられます。
その他にも、歯周病は、心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、悪性新生物(がん)、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。
それらのなかにはエビデンスが十分ではないものもありますが、いずれにしても、歯周病を治療することにより口腔の健康を維持することは、全身の健康維持にとっても重要であるといえるでしょう。
口腔と全身の健康状態に関連するリスクファクター
日本人の死亡のうち、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病による死亡は、死亡全体の半数以上を占めています。
生活習慣病は、その名の通り、食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの日ごろの生活習慣が原因となって起こるさまざまな病気のことをいい、生活習慣病の発病や悪化に関係する好ましくない習慣は、生活習慣病のリスクファクター(危険因子)と呼ばれています。
むし歯や歯周病などの口腔疾患は歯磨きなど口腔清掃習慣の影響を強く受けますが、食生活や喫煙など全身の生活習慣病と関連の深い生活習慣の影響も受けており、生活習慣病と多くのリスクファクターを共有しています。
むし歯や歯周病を予防し健康な口腔状態を保つためには、口腔を清潔に保つだけではなく、食生活の改善や禁煙なども重要な要素であり、そのことは全身の健康維持にも繋がります。
高齢者の口腔の健康と全身の健康の関連
高齢者では、むし歯や歯周病などによって多くの歯を失うことで咀嚼機能や嚥下機能といった口腔の機能が低下し、食生活に支障をきたして十分な栄養が摂れなくなると低栄養のリスクが高まります。
高齢者の低栄養は、筋肉量の減少によるサルコペニアやロコモティブシンドローム(運動器症候群)につながり、要介護となるリスクを高めます。
そこで、高齢者の口腔機能低下のリスクに対応するために、咀嚼機能や嚥下機能などの口腔機能の状態を評価する口腔機能検査が、歯科医療機関や後期高齢者の歯科健診で広く行われるようになっています。
口腔機能の低下が疑われる場合は、適切な歯科治療や口腔機能を向上させるためのトレーニングを行うことで、口腔機能の改善を図り、全身の健康維持に努めることが望まれます。
厚生労働省e-ヘルスネット参照