指しゃぶりは歯並びを悪くする?
生後まもなく自分の手という存在に気が付いた赤ちゃんは、生後2〜3ヵ月頃から1歳前後まで、無意識下で指しゃぶりをしていると考えられています。
この時期の指しゃぶりは、赤ちゃんが歯触りや味を確認するという生理的な現象ですので全く心配は無用ですが、1歳を超えると徐々に、指しゃぶりが癖になってきてしまうお子様がいらっしゃいます。 特に指しゃぶりは旧来より「歯並びが悪くなる」、「咬み合わせに影響がでる」と言われていますが、実際に指しゃぶりは歯にとってよくない影響を与えるのでしょうか。
●子どもの指しゃぶりによる歯並びへの影響
1歳以降の子どもは、「眠い」や「退屈」という気持ちを紛らわせるために指しゃぶりをするようになります。 赤ちゃんが口に入れた感覚で世界を認識しようとしている、成長に必要な指しゃぶりではなく、いわゆる手持無沙汰な状態で暇つぶしに行う指しゃぶりに移行していくイメージです。
特に1歳後半から2歳頃まで成長すると、口周りの筋肉もしっかりと発達してくることから、より強い力で指を吸うようになります。 10歳くらいまでの子どもの上顎は非常にやわらかく、毎日指を吸い続けていると、歯やあご、顔のかたちに大きな影響が生じる可能性が高まります。
これが、子どもの指しゃぶりは歯並びに悪影響を与えると昔から言われている所以です。 具体的には、子どもが指を咥える行動によって、まずは上の前歯が前方に押し出されることになってしまい、出っ歯を誘発します。 さらに指を強く吸う行動によって奥歯が外側から内側に押しだされる力が働き、上顎の歯列が狭くなり、歯並びの横幅が狭くなる狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)の原因になってしまうのです。
●指しゃぶりが歯並び以外に及ぼす影響
年齢とともに強くなる力で指を咥えて吸引し続けていると、歯並びという見た目の問題はもちろんのこと、健康上の問題につながりかねません。
具体的には指しゃぶりが原因で生じた歯並びのズレによる出っ歯や不正咬合などの状態になると、前歯が上手く咬み合わないので、食事の際に食べ物を嚙み切ることができない、また咀嚼音がしてしまうという影響が生じます。
また押し出された歯が邪魔で唇が正常に閉じなくなってしまい、口呼吸の習慣がついてしまうことも懸念されます。 さらに歯との咬み合わせと口の開け閉めが上手くいかないことにより、発音が不明瞭になってしまう、構音障害に悩む方も多いです。 2歳〜3歳以降の指しゃぶりは、見た目だけでなく健康上の大きな問題になりやすいことを理解しておきましょう。
●子どもの指しゃぶりに対する対処法
2歳頃までの指しゃぶりは無理にやめさせる必要はありませんが、2歳を迎えてもなお、退屈なときや眠たいときに指しゃぶりをしているようであれば、そろそろ指しゃぶりからの卒業を検討しましょう。
日中は指しゃぶりの代わりにブロックや積み木、パズルのように手を使う遊びを取り入れたり、保護者様が積極的にお子様との手遊びなどの時間を確保したりすることで、指しゃぶりをする手持無沙汰な時間をなるべく短くしていくことが大切です。
またお子様自身としっかり話をして、入眠のルーティンに関しても例えば毛布を握ったり、お母さんと手を繋いで寝ることにしたり、というように指しゃぶり以外の方法を模索していく必要があります。
また「たかが指しゃぶり」と考えず、大人になったときにお子様が見た目や健康面で悩むことのないよう、早い段階で歯科医に相談することも大切です。
●まとめ
赤ちゃんの指しゃぶりは全く問題がありませんが、2歳前後になっても続けている指しゃぶりは歯並びに大きな影響を与えたり、呼吸や食事、発音といった健康上の様々なトラブルにつながります。 顎の骨がやわらかく、簡単に歯並びや咬み合わせがずれてしまいやすい2歳から10歳ごろまでの期間は、将来のためにも正しい口腔環境を整えてあげることが大切です。 お子様の指しゃぶりや歯並びで気になることがある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
●監修者
院長 : 黒田 祐彰
経歴
- 1988年 朝日大学歯学部卒業
- 1990年 くろだ歯科医院開業
- 2003年 法人成設立 医療法人くろだ歯科医院へ
- 2006年 移転
- 2013年 移転 医療法人阡周会くろだ歯科医院へ
- 2013年 12月ホワイトエッセンス 淡路店オープン
所属
- 日本歯科医師会
- 大阪府歯科医師会
- 東淀川区歯科医師会
- 日本顎咬合学会
- 日本糖尿病学会